金子デーリィファーム 鹿児島県志布志市

牛たちに快適な環境を おいしい餌、水、空気が大切

目の前に茶畑が広がる志布志の台地に、金子デーリィファームがあります。金子栄一さん(56)、大輔さん(28)親子と家族で、約140頭の牛を世話しています。牛舎は、牛が自由に歩き回れ、出入りできる仕切りがあるフリーストールという形態です。広い牛舎の前に別棟があり、そこでは生まれたばかりの仔牛たちが、愛くるしい瞳を向けていました。

自動給餌で常に新鮮な餌を

金子デーリィファームでは、15年ほど前に、まだ珍しい自動給餌の機械を入れました。大きな機械で牧草などの餌を持ち上げ、ベルトコンベアーで餌を運び、時間がくると、牛たちの目の前に給餌します。「この方法だと、新鮮な餌を1日に7、8回も食べさせることができます。主に2人で経営できるように将来を見据えた時、導入を決めました」と栄一さんは話します。「常時、目の前に餌があれば、牛たちも快適でしょう」。

朝6時ごろから搾乳をした後は、大輔さんと、母親の真理子さん(55)が、ベッド掃除をしています。石灰を混ぜた清潔なのこくずを敷いた牛舎。快適であれば、牛のストレスがなく、いい牛乳がつくられます。「おいしい餌、おいしい水、おいしい空気、そして快適な環境で、おいしい牛乳を出してほしい」。日々の作業が、安全やおいしさに結びついているのです。

堆肥を生かし畑を増やしたい

大輔さんは農業大学校を卒業し、人工授精師の資格を取りました。牛の発情を知るための牛歩管理の情報は、パソコンや携帯にも届きます。授精では、雌雄判別が重要です。「雌雄判別精液を用いた人工授精により9割程度は雌が生まれます。受胎率を上げて効率よく後継牛を確保したい」と大輔さんの言葉にも力がこもります。

繁殖管理とともに、「これからはトウモロコシやイタリアンライグラスを育てる畑を増やしたい。堆肥を生かしたい」とも話します。現在は、自給の餌は3割ほど。堆肥舎も十分に活用し、循環できる酪農を目指しています。

親子、そして夫婦二人三脚で

金子デーリィファームは栄一さん夫婦による二人三脚により、着実に酪農経営の基盤を築いてきました。現在は3代目の大輔さん夫婦が中心となり、ご両親が築いた酪農経営を引き継ぎ良質な牛乳づくりを求めて日々奮闘されています。

大輔さんの奥様のいづみさん(28)は現在、子育てに専念中ですが、育児の合間をぬって搾乳や経理の仕事を手伝っています。

「機械の補修や電気関係も難しいですね。父に教わって勉強しながらです」と大輔さん。「ちょっとしたことは、何でも自分たちでやりますよ」。父親の栄一さんと二人三脚で、酪農への道を進んでいます。

取材・ライティング:Yuko Kawagoe