日本酪農科学会誌「ミルクサイエンス」における研究成果掲載のお知らせ

南日本酪農協同株式会社は学術誌「ミルクサイエンス」において、下記のとおりカゼインの熱挙動特性に関する総説を発表したので、お知らせします。

研究発表内容

■タイトル

酸性条件下にけるカゼインの熱挙動特性.

(Thermal behavior characteristics of casein under acidic conditions)

■著者

南日本酪農協同(株) 中野智木

■発表日
2018年12月25日

■概要

乳タンパク質を含む酸性の食品や飲料を製造する際、カゼインが不安定化し、凝集や沈殿などの問題が生じます。中性領域におけるカゼインに及ぼす加熱の影響は詳細に調べられているのに対して、酸性領域におけるカゼインに及ぼす加熱の影響は十分に調べられていません。牛乳の主要なタンパク質であるカゼインはカゼインミセルと呼ばれる粒子として存在しています。カゼインミセルの構造および乳の加工性はおかれる条件に影響を受けますが、酸性条件下において、カゼインの存在形態は中性域におけるものとは大きく異なります。加熱に対するカゼインの挙動を知ることは、乳製品の製造や品質管理において極めて有用な情報となり得ます。本総説は、酸性条件下で加熱したときのカゼインの挙動について、著者らの研究を中心にまとめたものです。

カゼインは酸性では不安定なので、酸性の飲料を製造する際は安定剤を使用しカゼインを安定化させています。しかしながら、特定の条件下ではカゼインは安定な粒子(酸性加熱凝集体)として存在し、安定剤を使用しなくても酸性の飲料を製造できます。酸性加熱凝集体の形成は共存するイオンにより著しく影響を受けます。また、酸性条件下におけるカゼイン成分の加熱に対する安定性は、中性域におけるものとは大きく異なることが明らかとなりました。これらは長年親しまれている「スコール」について研究したものであり、販売以来46年が経つスコールから、乳の新たな特性を見出しました。

また、従来カゼインは加熱によりゲルを形成しないと考えられていましたが、高濃度のカゼイン懸濁液を酸性条件下で加熱するとゲル化することを見出しました。酸性の加熱ゲルは熱可塑性であり、酸性ゲルやレンネットゲルとは異なる特性を有していることから、更なる新商品の研究・開発に応用できる技術として研究を進めています。今後も引き続き乳成分の特性を明らかにすることで、牛乳・乳製品の更なる価値創造を実現したいと考えています。

以上