日本酪農科学会誌「ミルクサイエンス」における研究成果掲載のお知らせ

南日本酪農協同株式会社は学術雑誌「ミルクサイエンス」において、下記のとおり酸性条件下におけるカゼインの熱安定性に関する研究成果を発表しましたので、お知らせします。

研究発表概要

■タイトル

Effects of heating and salts on aggregation and solubility of casein under acidic conditions.
( 酸性条件下におけるカゼインの凝集と溶解性に及ぼす加熱と塩の影響 )

■著者

南日本酪農協同(株)
中野智木、植木素子、溝口竜、竹下正彦、有馬勇夫
鹿児島大学農学部名誉教授 青木孝良

■発表日
2017年8月4日

■概要

乳成分を含む酸性の飲料を製造する際、カゼインが不安定化し、凝集や沈殿などの問題が生じる。中性領域におけるカゼインに及ぼす加熱の影響は詳細に調べられているのに対して、酸性領域におけるカゼインに及ぼす加熱の影響は十分に調べられていない。そこで、本研究では酸性条件下におけるカゼインの凝集と溶解性に及ぼす加熱と塩の影響について調べた。カゼイン溶液の濁度は加熱温度 (50-90℃)とpH (3.30-3.50)に依存して増加した。カゼイン溶液にNaClを添加すると加熱による濁度上昇を抑制した。未加熱のカゼイン溶液に30 mM以上のNaClを添加するとpH3.30-3.50の範囲でカゼインが不溶化したが、不溶化したカゼインは加熱により可溶化した。25 mM以下のNaCl存在下では加熱によりカゼインは凝集した。NaCl未添加のカゼイン溶液をpH 3.45で加熱した時形成されるカゼイン凝集体にはαS1-カゼインとβ-カゼインのみが含まれていたが、10 mM以上のNaClを添加すると他のカゼイン成分の割合が増加した。pH 3.45におけるカゼインの溶解性に及ぼすカルシウム、マグネシウム、リン酸、クエン酸の影響と加熱による変化も調べた。酸性条件下おける加熱と塩に対するカゼインの挙動は中性域におけるものとは著しく異なっていた。

以上