日本乳酸菌学会2014年度大会における研究成果発表

南日本酪農協同株式会社は、日本乳酸菌学会2014年度大会において、下記のとおり乳酸菌に関する共同研究成果を発表しましたので、お知らせいたします。

研究発表概要

演題

モンゴル乳製品由来乳酸菌の単純ヘルペスウイルス1型感染マウスへの効果

発表者

南日本酪農協同(株) 菊地幸治、竹下正彦、竹田志郎、○松崎竜也
九州保健福祉大学薬学部 黒川昌彦、渡辺渡、吉田裕樹
モンゴル国立科学技術大学 C. Tsend-Ayush
モンゴルバイオテクノロジー協会 T. Oyunsuren

発表日

2014年7月18日(金)

概要

目的

モンゴルの伝統的乳製品から約2000株の乳酸菌を分離し、その中からプロバイオティクス有望株10株を選び出した。また、過去の報告からこれら10株中、免疫調整作用を有する乳酸菌株も見つかっている。一方、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)はヒトへ感染し、宿主の免疫低下等によって口唇ヘルペス等を発症することで、現代人のQOLの低下に繋がっている。そこで本研究では、HSV-1によるヘルペス発症を、モンゴル乳製品由来乳酸菌で予防できるかどうか検討するために、HSV-1経皮感染モデルマウス(HSV-1感染マウス)を用いて実験を行った。

実験方法

  1. 実験に用いた乳酸菌について
    乳酸菌株は、プロバイオティクス有望株10株を用い、各乳酸菌株をMRS培地で37℃、24時間、静置培養した。そして、遠心分離によって回収した菌体を熱処理し、凍結乾燥により菌体粉末を作成した。
  2. HSV-1感染マウスについて
    マウスは6週齢のBALB/c(♀)を用いた。菌体粉末を生理食塩水に10%(w/v)で懸濁し、HSV-1感染2日前から1日2回、20 mg/マウスで経口投与した。感染はHSV-1:7401H株を、3×106 PFU/マウスで脇腹に皮内接種した。
  3. HSV-1感染マウスの遅延型過敏反応(DTH)を利用した一次スクリーニングについて
    HSV-1感染4日目に、UVで失活させたHSV-1を、後ろ足に接種し、DTHによる足の腫脹を経時的に評価した。
  4. HSV-1感染マウスの腸管パイエル板中のIFN-γ発現量の測定による二次スクリーニングについて
    マウスへのHSV-1感染及び経口投与は同様に行い、HSV-1感染4日目に、HSV-1感染マウスの腸管パイエル板を回収し、腸管パイエル板中のIFN-γ遺伝子発現量をリアルタイムPCRによって測定した。
  5. HSV-1感染マウスの病態変化の評価とウイルス量の測定について
    マウスへのHSV-1感染及び経口投与は同様に行い、HSV-1感染マウスの病態変化の評価と、皮膚と脳のウイルス量の測定を行った。病態変化の評価は、HSV-1感染直後から12時間毎に評価し、病態変化をスコア化した。皮膚と脳のウイルス量は、HSV-1感染4日目に、皮膚と脳を回収し、Vero細胞を用いたプラークアッセイにより測定した。

結果と考察

まず、一次スクリーニングとして、10種類の乳酸菌株をそれぞれ投与したHSV-1感染マウスにおいてDTHによる足の腫脹を評価した。ここで、DTHとはHSV-1経皮感染における主要な防御システムの1つであり、足の腫脹の増強はDTHの増強を示すと考えられている1)。結果、供試菌株のうちLactobacillus plantarum 06CC2株(LP432株)及びLactobacillus paracasei subsp. paracasei 06TCa22株(06TCa22株)投与群において足の腫脹が対照群と比較して有意に増強した(p<0.05)。よって、乳酸菌株を10株から2株に絞り込んだ。

次に、二次スクリーニングとして、06CC2株及び06TCa22株をそれぞれ投与した、HSV-1感染マウスの腸管パイエル板中の遺伝子発現量を測定した。今回は、細胞性免疫の活性の指標としてIFN-γ遺伝子の発現量を測定し、対照群と比較することで評価した。結果、06CC2株投与群においてIFN-γ遺伝子の発現率が対照群と比較して有意に増加した(p<0.05)。尚、06TCa22株では増加が見られなかったため、乳酸菌株を06CC2株のみに絞り込んだ。

最後に、06CC2株を投与したHSV-1感染マウスの病態変化を評価した。結果、06CC2株投与群において、HSV-1感染後48時間から84時間という感染初期での皮膚病変の進展が対照群と比較して有意に抑制された(p<0.05)。また、06CC2株投与群において、HSV-1感染マウスの脳のウイルス量が対照群と比較して有意に減少した(p<0.05)。

以上より、06CC2株を投与したHSV-1感染マウスにおいて、ヘルペス発症の進展が抑制された。また、そのメカニズムとして、細胞性免疫が亢進された可能性が考えられた。

参考文献

1) Kurokawa et al., Evid. Based. Complement. Alternat. Med. (2011), ID 976196.

以 上